偽りなき者 (2013)

 


「偽りなき者」(2013)
原題『Jagten
 

監督:トマス・ヴィンターベア
脚本:トマス・ヴィンターベア、トビアス・リンホルム
出演:マッツ・ミケルセン、アニカ・ヴィタコブ、ボー・ラーセン 他


幼稚園の先生として働くルーカス(マッツ・ミケルセン)。子供の扱いが上手く、園児達や同僚からの評判もとても良かった。
そんな彼の生活が一人の子供の"とある嘘"によって一変してしまう。
社会的に閉鎖された集落で起こる集団ヒステリーの恐怖と、その被害者になってしまうルーカスの苦悩を描く。



下手なサスペンスやホラーを見ているよりも怖く感じる。終始心臓はドキドキしっぱなしで心休まる暇もない。
「もし自分がルーカスの立場だったら…」と誰もが考えてしまう。
それと同時に周囲の人々の心理も充分に理解も出来てしまうのがまた恐ろしい。

そんな息つく間もない二時間弱を観客は過ごし、最後の十数分で途方に暮れる事になる。

果たしてエンドロールで心と頭の整理がつく人がいるだろうか?
きっとエンドロールの時間だけでは足りないんじゃないだろうか。
どれだけ時間がかかってもいいのでどうか自分で納得できる道を模索してみて欲しい。


製作国のデンマークでは『子供と酔っ払いは嘘をつかない』という諺があるそう。
本作の監督はそれに物申すというような気持ちで作ったとも話していた。

実際にこの物語の引鉄は"子供の嘘"です。子供にはその嘘がどれだけ大変な事であるか気づかず、周囲の大人に流されるままになってしまいます。
時に幼心に「自分の嘘で大変な事になっている」と理解し訂正しようとするも、周囲の大人はそれを信じようとしません。
この集団ヒステリーにかかっていくまでの過程、ここに本作の恐怖があります。

そしてもう一つ、序盤では主人公と周囲の平穏な日常が描かれます。
この平穏っぷりを上手に描写したからこそ集団ヒステリー後の日常との落差が観客を圧迫するのです。

こうした題材や純粋な映画作りの上手さ、巧妙な伏線の数々などがとても魅力的な映画でした。